2026年6月24日
【ブランドインタビュー】株式会社朝倉家具
金属加工の世界的産地・燕三条をはじめとして、全国シェア30%を誇るニット産業など、ものづくりが盛んな地域としてよく知られる新潟県。
株式会社朝倉家具は、そんな豊かなものづくり文化が根付く地で、桐たんすをはじめとした家具づくりを続けてきました。
現在は長年培ってきた技術を活かしながら、テーブルやソファなど、現代の暮らしに寄り添う家具を幅広く製作しています。
今回は代表取締役社長の朝倉さん、専務の倉茂さんにお話を伺いました。
桐たんすから現代の家具へ 伝統技法を取り入れたテーブルづくり

朝倉さん:私たちはもともと、桐たんすの製造元として誕生しました。
新潟県加茂市は桐たんすづくりが盛んな地域で、かつては全国シェア約70%を占めていたほどなんですよ。
ただ、かつて婚礼家具として需要があった桐たんすは慣習の変化によって減少の一途をたどり、以前は数百とあったたんすメーカーも現在は私たちを含む数社まで、かなり減少しました。
私たちもずっと桐たんす一筋というわけではなく、父の代でしばらく洋風の箪笥(家具の内側が桐材、外側に別の材を用いたたんす)を製作していた時期もありましたね。
1980年代に入る頃、ブライダルブームによって桐たんすの需要が増えてくることを見込んで桐たんすの製造へと再び軸を戻したのですが、
前述の通り時代の変化に合わせる形で2010年頃からはたんす以外の家具、たとえばテーブルやソファなどの製作へ本格的に着手するようになりました。
このような感じで、移り変わる時代の変化やトレンドに合わせてやってきています。
――たんすの製造からテーブルなどの家具製造へ、大きく舵を切りましたね。
朝倉さん:そうですね。
桐たんすや漆、和紙をはじめとする国から認められた伝統工芸品は、工法なども厳しく定められていることから進化や切り替えが難しい側面を持っていますので、こうやって事業を転換できているところはそう多くないと思います。
私たちは洋風のたんすの製作をやっていた時代があり、設備も材料の加工知識も少なからずあったおかげで、転換のハードルは下がっていたと感じます。
ただ、実際に手を動かす職人はやっぱり不安ですし、困惑しますよね。だから初めは企画のみで、つくるのは外注。それと仕入商品だけで始めたんです。

倉茂さん:もともとショールームで販売もしていたので、そこにご来店されたお客様の声も、家具づくりに慣れない当時の私たちにとって非常に貴重なものでしたね。
2018年に完全自社生産の体制ができ、たんすメーカーだからこその技術を活かしたものづくりを続けています。
たとえば「Sara Extension living table」という伸長式のリビングテーブルは、たんすの引き出しに欠かせない蟻組(ありぐみ)という技法を転用しています。


Sara Extension living table 商品ページはこちら
等身大の思いを形に

Patina, Round table 商品ページはこちら
――お客様のリアルな声は、とても参考になりますよね。商品開発のアプローチにもつながっていますか?
朝倉さん:今のトレンドがわかるので、もちろんお客様の声はとても参考にしています。
ただトレンドばかりを追いかけていても私たちがつくる意味に欠けるとも考えているので、「自分たちが好きかどうか」という感覚を大切にしています。
自分もお客さんの1人だと捉えてものづくりを考えるようにしているんです。
自分の年齢が今40代なのですが、20代や70代の方の気持ちが、やっぱり完全には汲み取れない部分があって。
昔はそこをどうしようか・・・と悩んでいましたが、最近は等身大でいいのかなと思うようになりました。
自分がちゃんと今のトレンドにアンテナを張ってさえいれば、年齢・性別に関係なく、完成したものの良さに共感してくれたり、欲しいと思ってくれたりするはずだと。
常に世間に求められているものと自分たちの強みをすり合わせしながら、新しいものを生み出しています。
倉茂さん: 会社ごとに色々な商品開発のスタイルがあると思いますが、私たちの場合「自分たちが欲しいと思うかどうか」が1つの軸になっていますね。
ぱっと湧いてくるというよりは、しっかりロジックを積み重ねて商品を開発していくスタイルですので、長いものだと完成まで半年から1年ほどかかるものもありますね。
新潟県の森林課題解決を目指した「スノービーチプロジェクト」

―― その「等身大」の姿勢が、もう一つの大きなテーマである「国産材」への挑戦に繋がってくるのですね。
朝倉さん:そうですね。私たちも家具に使う材料を国産材に切り替えて、もう10年ほどになります。
家具をつくるようになって、外国産のオークやウォールナットの価格がどんどん高騰していく現状をどうにかできないかと思っていたのですが、そんな時にたまたま森林関係のお仕事をされている方に出会ったんです。
それが新潟県産ブナの活用を推進する「スノービーチプロジェクト」に携わるきっかけとなりました。
――新潟県ではブナがあまり使われていなかったのでしょうか?
朝倉さん:はい。家具などの材料として使える民有林のブナは、おそらく新潟県が最も多いのではないかと言われています。
ブナ林は50年ほど前まで、主に薪や炭の材料として使われてフル活用されていたのですが、エネルギー革命により、電気・ガスが普及し、あまり必要とされなくなっていきました。
ただ薪炭林であるということは、人が管理してきた森林であるため、今後も森林整備を続けていくべきと考え、その上で資源として活用を模索していく必要があります。
この課題を解決しようと有志で立ち上がった運動が「スノービーチプロジェクト」です。
一方で、ブナはもともと水分を蓄える木のため、乾燥材になっても変形を起こす可能性が比較的高い木材であるがゆえに扱いづらいとされており、薪以外にはあまり使われていなかったようです。
また良くいえば、白くて綺麗。悪くいえば表情が少なく大人しい。ブナの魅力を引き出す製品企画に、悩む日が続きました。
――転換のきっかけは?
朝倉さん:虫食いのブナを使ったテーブルを開発したことが、状況を変える大きなきっかけになりました。
そもそものお話になるのですが、無垢のテーブルをご覧いただくと、一般的には節や変色のない綺麗な木が使われていますよね。
ただ、山を想像してみていただくと、木には枝があり、傷付いているものもあります。特に山の中でも低い土地に生えているブナは、カミキリムシに食べられてしまうこともあって。
そうすると、虫が食べたところからオレンジ色っぽい変色が起こるんです。
一般的に木の中心部は「芯材」といって色が濃い部分があるのですが、ブナの虫食いから変色したところも芯材と似ているため「偽芯材(ぎしんざい)」と呼ばれています。
スノービーチの活用に取り組み始めたばかりの頃は、私たちも一般的なメーカーと同様に、綺麗な材だけでつくっていたんです。
ブナの綺麗な白い木肌や上品な木目で、とても良い家具が出来たと思っていたのですが、なかなか思うような結果に繋がらず・・・。
そこで、逆に普通は使わないような虫食いの部分や、樹皮までそのまま使ってみようと、発想を変えてみました。
スノービーチプロジェクトでは、原木から製材・乾燥までを一貫して行っているので、綺麗な木材だけでなく、節も偽芯材も入っていたんです。
ですので私たちも材料を仕入れる度に、そういう材が入ってきていたのですが、当初は歩留りが悪いな~、としか考えていなかったんです。
当時はもうヤケクソの気持ちで、思いっきり自然味のあるテーブルを作ってやろうと(笑)

虫食いの偽芯材を使った天板。あたたかみのある色合いで、素材をダイレクトに感じられる。
倉茂さん:それが「他の木にはない、世界にひとつだけの表情」として、お客様にはすごく魅力的に映ったんです。
材の使い方・活かし方によって、他の樹種や他県産のブナなどと違って見えるといったように、スノービーチ活用の取り組みに魅力を感じていただける方も増えてきました。
山の課題を解決するだけでなく、他にはない新しい価値が生まれた瞬間でしたね。
家具の枠を超えて、暮らしに寄り添う
――これから目指したいこと、実現したいことはありますか?
朝倉さん:それぞれのライフスタイルに寄り添い、暮らしがもっと豊かになるようなものづくりをしたいと思っています。
見た目だけじゃなくて、実際に日常で使う中で良さを実感できるものをつくりたいです。
あと実はアパレルや雑貨もやっていまして、家具屋だからという固定観念に縛られず、家具以外の分野にもどんどん挑戦していきたいと思っています。
――日常で使ってこそ価値がわかるものづくり、そして枠にとらわれず挑戦されている姿勢が、お話を伺う中でも非常に伝わりました。
最後に、tokonoへのメッセージをお願いします!
朝倉さん・倉茂さん:国産材を使って家具をつくっている立場として、国産材にこだわったインテリアショップをやっていただけるのは非常に嬉しいと感じています。
まだまだ家具業界では「外国産材」を目にすることが多いので、tokonoが国産材の価値を発信し、その風向きを変える先駆者になってくれることを期待しています。
